川越を舞台にした、ほしおさなえさんの小説「菓子屋横丁 月光荘」。
最近、このシリーズの一巻目を読み、その魅力にハマってしまいました。
私は、「もし家の声が聞こえたら?」というブログ記事を書いたことがありますが、(家の記憶 - Miyukeyの気まぐれブログ )
偶然にも、この小説の主人公は「家の声が聞こえる」大学院生です。
なんだか親近感を感じてしまい、私自身、川越が大好きということもあって
読み始めました。
<あらすじ・内容紹介>
家の声が聞こえる――
幼い頃から不思議な力を持つ大学院生・遠野守人。
縁あって、川越は菓子屋横丁の一角に建つ築七十年の古民家で、
住みこみの管理人をすることになった。
早くに両親を亡くし、人知れず心に抱くものがある守人だったが、
情緒あふれる町の古きよきもの、そこに集う人々の物語にふれ、
自分の過去にむきあっていく。
人もものも、記憶を抱いて生まれ変わることができる。
心のいちばんやわらかな場所にやさしく沁みる新シリーズ、第一作。
ストーリー、内容は中学生から気軽に楽しめそうなものでありながら
川越の歴史や建築についてもしっかりと語られていて
とても興味深く、面白いのです☆
銭洗い弁天のある熊野神社の近くに住む後輩女子大生「べんてんちゃん」、
お世話をしてくれる気さくで優しい大学院の指導教授・木谷先生をはじめ、
川越に住む様々な人との交流とふれあいの中で
主人公・遠野くんが成長していき、べんてんちゃんとのキョリも縮まっていく・・・
ハッピーストーリー♪
写真左から(時の鐘・川越の街並み・川越の鯛みくじ)
何度も行っている川越!!
でも、いつも気に入った同じルートばかり回ってしまい、
実際には、まだ行ったことがない面白そうな場所がいっぱいだと
この小説を読んで気づきました。
「菓子屋横丁 月光荘」の本を一冊、鞄に入れて
この小説の舞台をめぐるべく川越へと、いざ出発☆
1、ベーカリー楽楽とサンドイッチパーラー楽楽
べんてんちゃんはうれしそうにサンドイッチを頬張る。僕も一口食べて、パンのおいしさに驚いた。具ももちろんおいしいのだが、なにより食パンがおいしい。
昨日夜の街をさまよったときの怪しい気持ちが、身体のなかからすっかり晴れていくようだった。
食いしん坊の私が心を惹かれたシーンが、
遠野くんとべんてんちゃんが朝ごはんを食べるシーン。
引っ越したばかりの遠野くんが朝食を食べようと
川越の街をさまよっていると、偶然、近くに住んでいるべんてんちゃんと遭遇。
二人は、朝早くから開店しているベーカリーとサンドイッチパーラーで
朝食を買い、テラス席で並んで食べるのです。
そのシーンが、もう、おいしそうで、おいしそうで!!
「このお店、すごくおしゃれだよね。パンもおいしいけど、建物もさ」
「そうなんですよ。建物自体は新しいんですけど、外観は伝統的な町家の造りだし、壁の色を養寿院の土壁と同じ色にしたり、風景に馴染むようにしてる、ってことで、都市の景観デザインの賞も取ってるんですよ」
「へえ」
改めて建物を見直す。たしかに川越の町家と似た造りなのだが、和風すぎない。この庭などはちょっとヨーロッパ風にも見える。
ベーカリー楽楽。
養寿院と同じ壁デザインの店構え。
テラス席
テラスは緑に囲まれたお庭のような素敵な空間。
遠野くんとべんてんちゃんは、ここで朝ごはんを食べたと思われます。
が、この時は、人がいっぱい・・・
それに、私は、どー--しても食べたい場所があったのです。
それが、向かいの「サンドイッチパーラー楽楽」の
屋上テラス!!
「ベーカリー楽楽」と同じお店が経営するサンドイッチパーラーです。
サンドイッチパーラー楽楽
サンドイッチパーラー楽楽を横から見たところ。モダン!
景観賞を獲ったのもうなづける、素敵な建物☆
階段を上って3階へ・・・☆
屋上テラス
かわいい!
他にもあと2つテーブル席があります。
秋空を近くに感じました☆
柔らかい日差しを浴びながらのランチタイムは最高です!
迷いに迷って、べんてんちゃんは結局サンドイッチ屋の方でフルーツとクリームのはいったサンドイッチを買い、パン屋ではフレンチトーストを買っていた。栄養バランスはそれでいいのか、と思ったが、満足そうなので、なにも言わなかった。
僕は、ローストビーフと野菜が入ったサンドイッチに、先生が言っていた味噌パンを買った。
(P90)
いっぱい買い込んでしまいました♪ 注)写真は、二人分の食事です。
遠野くんも食べたローストビーフと野菜のサンドイッチ。
具が溢れんばかりのボリューム!
ローストビーフにしっかりめにお味がついていて美味しい!
そして、「ベーカリー楽楽」の看板商品、「味噌パン」。
中はふんわり、外はカリカリサクサク!
ほんのりとお味噌の味もして、美味しいです!
でも個人的に一番おいしかったのは、三元豚のカツサンドでした。
屋上のテラス席は、犬を連れたお客さんもいたりして
開放的な雰囲気☆
川越の街を見下ろしながら、空に少し近い空間でのんびりと
おいしいパンとサンドイッチをほおばる時間は、しあわせ♪
遠野くんとべんてんちゃんも、こうして徐々に距離が縮まっていくのですね~☆
ほんの少し空に近くて、街の賑わいも感じられるテラスにて。
2、カメレオンの看板のうなぎや「うなっ子」
大きなカメレオンの像のあるうなぎ屋の横を通った。古い木造の建物の横に色鮮やかなカメレオンの像があるのが奇妙で、おかしかった。
(P34)
この近くには他にも小説に登場したスポットがいっぱい。
カメレオンの看板のうなぎ専門店「うなっ子」。
川には河童、壁面にはコイ、さらには「尻にしかれて30年!」の看板・・・と
すこし意味不明ではありますが、面白いデコレーションがいっぱい☆
見ているだけで面白いですが、突き詰めて調べてみたくなりますね。
「あぁ~尻にしかれて30年!」の看板(写真・左)
用水路には、本物の鯉もいっぱい。(右)
3、養寿院
「うなっ子」の向かいには、養寿院。
川越の大切なスポットとして小説に登場します。
特に、ラストで、失踪した父親に対する思いから結婚に踏み切れない男性・佐々木さんが
養寿院の大きな銀杏の木を見て父親との大切な記憶を思い出し
過去と向き合う場面は印象的でした。
「あのイチョウの木」
養寿院の前の木を指す。大きなイチョウの木が緑の葉を茂らせ、門を半分覆っている。周りに高い建物がないので、青い空に緑の葉がよく映えていた。
「あの木を見たとき、ああ、あれはここだったのか、って思い出したんです。」
大銀杏の木。
下に立って見上げると、包み込んでくれるような温かさを感じます。
木の幹にはコブのようなものも。
魔女のイボみたい??(写真・左)
でも、そのそばには、小さな親指の爪くらいの葉っぱが一枚。
赤ちゃんの葉っぱです^^(写真・右)
老いるもの、生まれてくるもの、二つが混在している木を見ていると
生命というものについて考えさせられます。
4、菓子屋横丁
川越の有名な菓子屋横丁。
ずらりと並ぶ昔ながらのお店。
飴玉の店、駄菓子屋、綿菓子屋、漬物のお店、
そしてメンコなどのおもちゃや古びた食器、昔の小銭を並べているお店など・・・
もう、完全にタイムトリップした気分!
ひと昔前の庶民の暮らしにどっぷりと浸れます。
しかも、全てが再現ではなく、その時代から残っている建物だから、
尚更、味わい深い!
「松本醤油店」は天保元年に建造された蔵が現在も残る約250年も続く蔵元(写真・左)
木谷先生がさつまいもスティックを買った「浜ちゃん」。川越には着物を着た観光客も多いです(写真・真ん中)
こんなお店がびっしり建ち並ぶ菓子屋横丁(写真・右)
5、川越氷川神社
川越に来たら、絶対訪れたい場所、川越氷川神社。
縁結びでも有名で、小説の中でも、登場人物のカップルを導く
重要な役割を果たしています。
川越氷川神社については、過去記事をご覧ください。
秋空に揺れる風鈴と、知られざる名言 @川越氷川神社の「縁結び風鈴」と「鈴木聞多命顕彰碑」 - Miyukeyの気まぐれブログ
5、最後に ~小説の舞台をめぐれば見えるもの~
小説「菓子屋横丁 月光荘」を読んで、
その舞台となった場所という観点で川越の街を歩いてみると、
いつもとはまた違った街の表情が見えました。
そして、舞台を訪れた前と後とでは、小説に対する愛着、理解度も
格段に増した気がします。
登場人物は、どんな気持ちで、この景色を見たのだろうと
思いを巡らせながら歩く町は、いろいろなことを語ってくれました。
小説は読むだけでも楽しいですが、舞台となった場所を訪れると
もっと楽しい!
まさに2度楽しめるのです!
あなたの好きな小説は、何でしょう?
読書の秋、本を一冊持って、文学さんぽに出かけてみませんか?^^
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
今回、ご紹介した本です。(シリーズ1巻目)
川越の本屋さんで、シリーズ2巻目も買いました☆
続きを読むのが楽しみ! また舞台を巡る川越さんぽ第2弾をしたいと思っています!
シリーズ2巻目
実は、「菓子屋横丁 月光荘」は、
こちらも川越を舞台にした小説だそう。
私は未読ですが、こちらも読んでみたい・・・
<文学さんぽの過去記事>
今週のお題「カバンの中身」
今週のお題「最近おもしろかった本」