軽井沢で訪れた睡鳩荘(すいきゅうそう)。
白樺の木々と湖の向こうに佇むヴォーリーズ建築の洋館。
それを見ただけでも、絵の中に飛び込んだような錯覚を起こしますが
そこで過ごした家族のストーリーは、
その外観にも増して美しい物語のよう。
今回は、2021年9月28日に訪れた睡鳩荘をご紹介します。
睡鳩荘は軽井沢のリゾート・レジャー施設「タリアセン」内にあります。
タリアセンには他にも
ペイネ美術館、高原文庫、堀辰夫山荘など見どころいっぱい!
白樺の木々の間から見える睡鳩荘の姿は、軽井沢を代表する景観です。
塩沢湖に寄り添うようにして静かに佇む邸宅、睡鳩荘。
お気に入りの相棒、てのりごちさんもここで、パチリ。
(ちょっと見えにくいですが、左の木の上でウットリしている錫のおもちゃが、てのりごちさんです。詳しくは、こちら→→私が買ったちょっと不思議で愛しいモノ3選 - Miyukeyの気まぐれブログ))
睡鳩荘はW.M.ヴォーリズの設計で
1931年に建てられました。
2017年には有形文化財に登録されています。
その娘、フランス文学者で翻訳家の朝吹登水子さんの別荘でした。
塩沢湖のほとりの美しい姿は
「思い出のマーニー」のアニメのモデルにもなったとか。
ログキャビン風の木壁と白い枠の窓や手すりが特徴。
裏から見た睡鳩荘。
1階内部。
中に入るなり、息を呑む美しさ・・・!
ここは、朝吹家が暮らしていた当時の様子を再現した部屋です。
軽井沢彫りの家具棚や籐椅子、
朝吹登水子さんがフランスから買い付けたカーテンや譲り受けた絨毯、
シカの剥製・・・ソファや暖炉。
歴史に名を馳せた一家の楽しい語らいが聞こえてきそう。
この一室の隅には、朝吹登美子さんの書籍を売るコーナーが
あります。
翻訳本がほとんどですが、エッセイ集も。
フランス文学の名作の数々を翻訳、
日本にいち早く紹介した朝吹登水子さん。
サガンの小説の訳で有名ですよね。
もう一度、朝吹登水子訳の文学作品を読んでみたくなりました。
さて次は、2階へ・・・☆
かわいいランプの温かい光と、窓辺に揺れる緑の調和が美しい・・・
踊り場に朝吹常吉の立派な胸像がある階段を上がり、
2階の部屋へ。
優雅な籐椅子。
座ったら、きっと、女王様になった気がするんだろうなぁー!
(この部屋は入室禁止で撮影のみ)
窓から湖や緑が見渡せる広々とした書斎やベッドルーム。
こんな素敵な別荘で夏を過ごすって、
どんな気分なのでしょう!?憧れる・・・!!
あまりの美しさに興奮しすぎたので、
入室OKの部屋でソファに座って、ひとやすみ。
テーブルの上にある家系図を見たら、
この一家のそうそうたる顔ぶれに、ため息。
家具の上や壁には在りし日の家族写真が飾られています。
華やかな暮らしが偲ばれる写真の数々。
開け放たれている窓から、秋風と柔らかい陽の光が差し込んできます。
バルコニーに出てみたら、湖がきらめいていて
絶景でした。
朝吹登水子さんも、こんな風に、仕事の合間にバルコニーで一休みされたのでしょうか。
朝吹登水子って、どんな人だったのだろう!?と、
ソファに腰掛けながら、ふと想像してみます。
三越の社長の娘で、フランス文学者。
生活はフランスと日本の行ったり来たりで、
夏には、この睡鳩荘の別荘へ。
生まれた時からのお嬢さまで、頭脳明晰な才女。
庶民で凡人の私には、雲の上のような存在に思えるのです。
でも、この睡鳩荘にいると、
ここで生活していたという朝吹家の人々の姿が、
見えるような気がして、身近に感じられるから不思議です。
次に訪れる時は、エッセイも読んでから来たいと思います。
夢見心地のまま、睡鳩荘を後にしました。
睡鳩荘から続く小道は、まるで幼い頃に読んだ本の中の世界。
そう、「たのしい川辺」や「赤毛のアン」を読んで
私が想像した小道そっくりだったのです!
木々で縁取られた細い道には
木漏れ日が揺れ、風にそよぐ枝があり、
まぶしいほどにきらめく湖の光が見渡せ・・・
幼かったあの頃、夢中になって読みふけった本の数々を思い出し
懐かしさと美しさで胸がいっぱいになりました。
もちろん、実際はカナダやイギリスの大自然を舞台にした物語なので
作者が書こうとした風景とは異なるでしょうが・・・
もう擦り切れるくらい繰り返し読んだ高柳佐知子さんの
「『赤毛のアン』ノート」。
あの本に描かれていた絵を見て想像していたのは、
こんな小道でした。
ふっと振り返ると、夢を見ながらまどろんでいるかのような
睡鳩荘。
中国渡来の睡鳩の掛け軸を売った代金で建てた別荘であることから
「睡鳩荘」と名づけられたそうですが、
なんてぴったりの名前なのだろうと思います。
空に雲が垂れ込めてきたら、ますます謎めいて見えました。
また来るからね、また夢を見させてね、睡鳩荘☆
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
<軽井沢に関する過去記事>