ドライブがてら、ぶらっと訪れました。
初めての場所は、いつもワクワクします。
どんな出会いが待っているのでしょう?
1、時の流れ方が違う・・・
重要伝統的建造物群保存地区の風情ある景観
上り坂が続きます。
梅雨が明けきらず、どんより曇っていたから微妙かなと思いましたが
暑すぎず、人も少なくて静かで、かえって良かったかも。
街角で出会ったかわいい猫と亀の置物。背中の小さな亀さん、見えますか?
美しい日本の歴史的風土百選、日本の道100選に選ばれた景観です。
江戸時代から明治にかけての建物が残ります。
↓↓この鍵型の道は、藩政時代、敵の侵攻、直進を妨げるために作られたそうです。
古い町並みが好きです。
歴史ある建物をそのままに保存した町には、
その町にしかない時間が流れているように思います。
私達が生まれるずっとずっと前に、この場所で生活していた人々の
息遣いが感じられる場所。
私達と変わらず朝起きて、夜寝て、泣いて笑って、
誰かを好きになったり傷つけたり、そして
生まれて、死んでいく、その綿々と続いていく営み。
人間の暮らしはすごく変わったけれど、
生きとし生きるものの、「変わらないもの」は、
なんて美しく尊いのだろうと思います。
この小さな路地は、「せだわ」というそうです。
内子の人々にとって大切な生活空間であったという「せだわ」。
この路地から見上げる細長い空を、人々はいろいろな想いで見上げたんだろうなぁ。
(左)「ゆっくり ゆったり」・・・って、私みたい。と思ったら、俳優の八名信夫さんの碑なのですって。
こんなところに、売り物件!?
古い街が好きだとは言っても、古民家に住むのは、やっぱり、なんか怖い。
幽霊が出そう~・・・!
2、消えない蝋燭・・・大森和蝋燭屋
ぶらりと入ったお店は、和蝋燭屋さん。
江戸後期の古民家の薄暗い空間に、蝋燭がずらりと並んでいる様子は
どこか絵本の中の不思議なお店に迷い込んだよう・・・
思わず息をひそめたくなるような、静かな空間。
内子は木蝋で栄えた街。
ハゼの実を原料とした木蝋は高品質で海外にも輸出され、莫大な富をもたらしました。
その内子で、200年もの間、同じ製法を受け継ぎ作り続けてきた大森蝋燭。
江戸時代から7代も続く県下で唯一の和蝋燭屋さんだそうです。
特徴は、風が吹いても消えにくい、蝋が流れにくいこと。
なんの装飾もない黄色がかった白のろうそくは、シンプルな中に美を感じます。
職人さんもまた、蝋燭のように、
揺らがず、心の炎を消さず、強くしなやかに技を極めたからこそ
時代を超えて愛される蝋燭が残っているのでしょう。
伝統って、すごい。
3、古民家カフェで、かき氷・・・なるカフェ
100年以上の歴史ある古民家を利用したカフェ「なるカフェ」さん。
この「プレミアムかき氷」が、お目当て。
ミルククリームたっぷりのかき氷。
内子産のイチゴをふんだんに使ったシロップは、
果肉たっぷり☆
暑さに疲れた体に、氷の冷たさが沁み渡る・・・!
内子の資料館などの施設や、お店(レストランは除く)は
冷房が全くないのです!!!(泣)
曇りで、まだ暑さもマシな日だったので助かりましたが・・・
猛暑の日にお出かけの際は、お気をつけください☆
カフェに入ってすぐのエントランスで迎えてくれる素敵なランプ(左)と、夫が食べたキウイのかき氷(右)。味見をしてみると、さわやかな風が吹き抜けるようなお味♪こちらのキウイも内子産です。ごちそうさまでした☆
4、贅を尽くした豪商の暮らしぶり・・・上芳賀邸
江戸~大正時代、内子最大の製蝋業者であった上芳我家の邸宅。
入ったとたん、心が静まりました。
周りの喧騒も、心の中の雑音も、
この空間にいると、すぅっとかき消されるような・・・
床の間に生けられた花、差し込む柔らかい光。
何百年も前に、ここで暮らした人たちも、同じように生活の中で
この光景を見ていたんだろうな。
ふすまに書いてあった言葉「百戦百勝 不如一忍」が、なぜか心に刺さりました。
澤庵禅師(たくあんぜんじ)の言葉だそうです。
建物は三階建て。
贅を尽くした暮らしぶりが伺える美しい空間は素晴らしいですが
一番心に残ったのは、使用人が過ごした炊事場です。(写真がなくて、すみません)
そこに使用人たちの食事が展示されていました。
お粥とタクアン、そして野菜の入った小鉢。
(それと、具の少ない味噌汁もあったかもしれませんが、忘れてしまいました・汗)
・・・魚や肉などのタンパク質が、ない!
しかも、スタッフさんいわく、野菜の小鉢は、月に1,2回だけ。
日頃は粥とタクワンなどの粗末な食事で
朝から晩まで重労働をこなしていたのだそう。
せめてもの慰めは、おかわり自由だったこと。
30坪もの広さがある薄暗い炊事場。
ここで従業員や職人、使用人の食事がまかなわれたのです。
彼らの労力に、この一家は、そしてこの町は支えられ栄えていたんですね。
(使用人の食事についての記述は、森下礼さん id:iirei のご指摘を受けまして
一部、書き変えました。)
上芳賀家が政府官僚を接待している様子を再現した蝋人形。
名物の鯛飯や鯛そうめんを前に盃を交わす二人。
身分のちがいは、今も昔も変わりませんね。
4、愚痴が多すぎる・・・商いと暮らし博物館
明治時代の薬商の建物の中に蝋人形を配し、
当時の暮らしぶりが再現されている資料館です。
楽しそうな一家団欒・・・に見えますが、食べているものは
やっぱりここでも、ご飯に漬物、具の少ないお味噌汁だけ。
館内にはたくさんの蝋人形があり、
近づくと音声でセリフが流れるようになっています。
たとえば、こんな感じ。・・・
女中「あぁあ~!今日も朝から洗濯じゃ!これが終わったら掃除もせにゃならんし!
ここは広いけぇ、大変じゃ!腰が痛うてたまらん」
使用人「薬の箱は重くてたまらんし、横文字は難しくてなかなか覚えられんし・・・はぁあーーー!!やっぱり、この仕事、わしには向いとらんのじゃろうか」
資料館中に、愚痴が響き渡っている感じ。
いやぁ、当時の人たちの暮らしの大変さは十分わかりました。
でも、愚痴が多すぎて、面白くて主人と二人で笑ってしまいました。
笑いすぎて写真を撮るのを忘れてしまったので、気づいたら2枚しか写真が
ありませんでした・・・。
5、内子座
内子座へ到着。
内子といえば内子座!というほど、有名な場所です。
でも、この時、冷房のない場所を回りすぎて、
すでにちょっとバテて、あまり記憶が・・・
今度行ったときは、一番に訪れようと思います。
芸能を愛してやまない人々の熱意で建てられた内子座。
一番、心に残っているのは、奈落。
舞台や花道の床下が真っ暗で地獄の底のようだということから「奈落」と
呼ばれているそう。
6、最後に・・・内子、木蝋で栄えた街を巡って
大正、明治の人々の暮らしがそのままに残る場所、内子。
その風情ある街並みや
伝統を受け継ぎ、残してきた人々の熱い想いと志。
繁栄を極めた豪商の贅を尽くした暮らしぶりと
彼らを支えた労働者たち。
建物だけではなく、時の流れや人々の想いまでも保存されている街・・・
絶えず変わっていくものがある一方で
「変わらないもの」の美しさや尊さも感じられた
この夏の一日は、とても思い出深いものとなりました。
古民家カフェ「なるカフェ」さんでもらったポストカード。部屋に飾っています♪
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
愛媛を舞台にした絵本、「かなしきデブ猫ちゃん」。内子座や内子の街も登場します。
私はこの本を読んで内子へ行きたくなりました。
<過去記事紹介>
今週のお題「となり街」