富士山に抱かれる街、河口湖。
そこには数多くの美術館があり、
胸を打つ出会いで溢れています。
今回、ご紹介するのは2019年10月に訪れた
河口湖 音楽と森の美術館(旧オルゴールの森美術館)。
あの豪華客船タイタニック号に搭載される予定だったオルゴールをはじめ
世界最大級のダンスオルガン、ヨーロッパで流行した自動演奏人形など
貴重なオルゴールがいっぱい。
また、サンドアートやオペラなどのコンサートイベントも充実しています。
富士山を見渡せる絶景カフェを備えた庭も必見。
見どころたくさんの河口湖 音楽と森の美術館から
今回はヘレンキームゼー城のオートマタ(自動人形)を
ご紹介します。
↓↓河口湖 音楽と森の美術館については、こちらもご覧ください。↓↓
館内で観られるシンギングバードについての記事はこちら♪
河口湖 音楽と森の美術館の庭園にあるローズガーデンについてのご紹介はこちら♪
1、ヘレンキームゼー城とは
ヘレンキームゼー城の鏡の間
1878年から1886年にかけて
ヘレンキームゼー城をヴェルサイユ宮殿そっくりに作るよう命じ、
鏡の回廊の天井にはルイ14世の壁画を25個も描かせました。
この城はルートヴィヒ2世の死去とともに建設が中止され、
今でも未完です。
2、孤独のメルヘン王、ルートヴィヒ2世の悲しい運命
次にルートヴィヒ2世はどんな人だったのか、
簡単にご紹介します。
ディズニーランドのシンデレラ城のモデルとして有名な
ドイツのノイシュバンシュタイン城を建てた
19世紀のバイエルン王です。
数々の美しい城や宮殿を築いたことから、
「メルヘン王」とも、
莫大な資産を城の建築と音楽に湯水のように費やしたことから
「狂王」とも呼ばれていました。
美しいものをこよなく愛したルートヴィヒ2世は
15歳のときに出会った音楽家ワーグナーのオペラの世界を表現する城として
小高い山の上に絢爛たる城ノイシュバンシュタイン城を建てましたが
その完成を見ないうちに
今度はルイ14世への敬愛を表す記念碑として
ヘレンキームゼー城に着工します。
わずか18歳で王座に就いたルートヴィヒ2世でしたが
政治には無関心で芸術を愛し、
自分の追い求める美のためには財を惜しみませんでした。
美と芸術を愛する夢見がちで多感な王の気持ちは
周囲の人には理解されず、
王は孤独のうちに生きることになります。
バイエルンは統合されます。
平和主義者であったルートヴィヒ2世は、抵抗することもなく
その後は身を隠すように城に引きこもって暮らすようになりました。
1886年、財政難を危惧した臣下たちにより、
精神病を理由に廃位、軟禁され、
その翌日、精神科医グッデンとともに湖で水死しているのが見つかりました。
ルートヴィヒ2世は40歳で謎の死を遂げたのです。
不滅の美を追い求め、
夢の中でしか生きられなかった孤独な王。
ルートヴィヒ2世が遺した数々の城は、
今でも王の夢を讃えて燦然と光り輝いているのです。
↓↓宝塚歌劇団初の女性演出家、植田景子さんの大劇場デビュー作
「夢と孤独の果てに ルートヴィヒ2世」。
主演の愛華みれさんが
純粋で優しく、この世で生きるにはあまりにも繊細で
美しすぎる王の
孤独と愛の生涯を見事に演じています。
この世では決して真の幸せを得られなかったルートヴィヒ2世の
幸せそうな表情のラストに胸打たれます。
公演当時、舞台を観て大感動しました。
今でも時々、DVDを観てルートヴィヒ2世の美しい世界に酔いしれています。↓↓
3、河口湖 音楽と森の美術館の
ヘレンキームゼー城のオートマタ
お待たせしました☆
それではいよいよ
河口湖 音楽と森の美術館の
ヘレンキームゼー城のオートマタをご紹介します。
写真は全て私が2019年10月に撮影したものです。
ため息が出るほどかわいい人形たちと
素敵なお城。
お城の中は鏡の間が再現されています。
私がヘレンキームゼー城のオートマタを覗き込んでいると
スタッフの方が、パチッとスイッチを押してくださいました。
すると・・・☆
お城の中が金色に輝き、人形たちが踊りだしたのです☆
かわいくて美しい人形たちの舞踏会に息をのみます。
金色の光の中で踊る人形たちを見つめていると
魔法にかかったように感じられました。
小さな人形の世界と、
実際に生きたルートヴィヒ2世の孤独な夢が重なり合う時、
ふっと現実ではない世界へ足を踏み入れた気持ちになります。
美術館を出ると、もうあたりは真っ暗でした。
ライトアップされた庭園の湖に、
真っ白な白鳥が一羽、羽を休めていました。
ヘレンキームゼー城のオートマタとともに
幻想的な一ページとして胸に残っています。
追記・注)「オートマタ」とは自動人形、ないしは機械人形のことで必ずしも音楽がついているわ けではありません。今回、ご紹介しましたヘレンキームゼー城のオートマタは、音楽はついていません。紛らわしい記述がありましたことをお詫び申し上げます。
最も訪問しにくい場所にあり、
今でも小さなフェリーでしか行けないそうです。
世間から遠く離れた湖に浮かぶ島に、
愛してやまないヴェルサイユ宮殿を模した城を建てた王。
ルートヴィヒ2世の精神状態と孤独の心が表れている気がします。
その当時のルートヴィヒ2世の様子が
ウィキペディアにはこう書かれています。
1870年、普仏戦争で弟オットーが精神に異常をきたした。ルートヴィヒはますます現実から逃れ自分の世界にのめり込み、昼夜が逆転した生活を送るようになった。王は一人で食事を取り、あたかも客人が来ているかのように語っていたり、夜中にそりに乗って遊んでいたところを地元の住民に目撃されたと伝えられている。
引用:
昼夜が逆転し、深夜に一人で自分の世界に浸るようになった王。
人々が眠る夜更けに、ヘレンキームゼー城の鏡の間を訪れ
一人きりで過ごしていたと伝えられています。
絢爛豪華な33ものシャンデリアと
2000本ものろうそくが灯される燭台に囲まれて、
ルートヴィヒ2世は、どんな夢を見ていたのでしょうか。
彼はこんな言葉を残しています。
「私は自分にとっても他人にとっても
永遠の謎でありたい」
その言葉通り、ルートヴィヒ2世の死は、
今でも謎に包まれ、
在りし日の彼の夢を伝える城だけが残っているのです。
ヨーロッパ宮廷一の美貌を誇るエリザベートと美青年と名高かったルートヴィヒが
親しく寄り添う姿は美しく人目をひいたそうです。
心を許していたというルートヴィヒ2世。
窮屈な宮廷生活に耐えきれず旅を繰り返し、
公務よりも美と自由を求め続けた8歳違いの
エリザベートとは気が合ったのでしょう。
皇后エリザベートは、ルートヴィヒ2世の死の知らせを聞いて悲しみ、
「彼は決して精神病ではありません。ただ夢を見ていただけでした」
と語ったと言われています。
5、最後に
ルートヴィヒ2世が敬愛してやまないルイ14世の記念碑として建てた
王の悲しくも美しい生涯を知ると、
河口湖 音楽と森の美術館のオートマタも
ますます輝いて見えました。
海外旅行が難しいいま、
緊急事態宣言が解除されたら
まずは国内のヘレンキームゼー城オートマタで
ルートヴィヒ2世が生涯をかけて追い求めた
夢と孤独、幻想の世界に想いを馳せてみるというのは
いかがでしょうか?
注)「河口湖 音楽と森の美術館」は緊急事態宣言後に開館予定で、現在は休館中です。
詳しくはホームページでご確認ください。↓↓
<河口湖についての過去記事>