Miyukeyの気まぐれブログ

愛媛県在住のアラフォー主婦です。本、洋画、訪れた場所などの感想を気まぐれに、かつ自由に綴りたいと思います☆笑顔の扉の”key"を見つけられる毎日になることを祈って♪現在は、仕事繁忙期のため月に2回の更新となっていますが、よろしくお願いいたします☆

「マイ・ブロークン・マリコ」 友情は死を超えられるか

マイ・ブロークン・マリコ

 

この映画についてブログを書かれている方はたくさんいるし

レビューも感想も既にネットに溢れています。

だから、わざわざ私が駄文を連ねて書くことなんて何にもないのですが、

やっぱり書かずにはいられない。

それだけ心に刺さる映画でした。

 

ネタバレのない記事を心がけていますが、映画の内容を知りたくない方は、ご注意ください。

 

0、「マイ・ブロークン・マリコ

 

キャスト:永野芽郁 奈緒 窪田正孝 尾美としのり 吉田羊

監督:タナダユキ 脚本:タナダユキ 向井康介 原作:平庫ワカ

製作年:2022年 上映時間:85分

 


幼少期から父親から虐待を受け続けていたマリコ

26歳で選んだのは、死。

親友のシイノトモヨがそれを知ったのは、

ラーメン屋でラーメンをかきこんでいるとき、

偶然に流れてきたテレビニュースからでした。

命からがら盗み出したマリコのお骨を脇に抱え、

シイノは旅へ。

行先は、マリコが生前に行きたがっていたけど父親の虐待のせいで

行けなかった海。

最初で最後の、親友(のお骨)との二人旅。

そこでシイノは、亡きマリコとの想い出をたどるのです

 

この映画の原作は、こちらの漫画です。(1巻完結)

かなり原作に忠実に作られているそうです。

 

1、壊れてしまったマリコを支えた一筋の光は

 

暴力を振るわれることが日常だったマリコの日々は

暗闇のどん底で、辛くて、希望がなくて・・・

そんな中で一筋のわずかな光がさしている、

それが「シイちゃん(シイノ)」の存在だったのだと思います。

マリコは、シイちゃんの存在に、しがみついていないと生きられなかった。

必死でしがみつくしか、生きる道がなかったのでしょう。

成人して、一人暮らしを始めても暴力男を恋人に選んでしまうマリコ

 

「どんなに心から心配して見せたって

そんなもんじゃ、どうにもならないところに

あの子はいたんだよね」

 

シイノが海辺でつぶやくシーンは、とても印象的です。

かけがえのない存在を救えなかった悲しみ、喪失感と怒りと

マリコとの記憶が薄れていってしまうことへの焦燥感と。

親友との「二人旅」は、「本当に親友を救うことはできなかったのか?」と

自問し続けるものでした。

 

骨壺を小脇に抱えて旅を続けるシイノ。マリコとの想い出を辿りながら、自問し続ける。

 

父親から逃れて、もう体に痣も傷もなくても

マリコが心に負った傷は一生治ることはありませんでした。

むしろ逃げ切った場所で、ますます傷は深くなって死に追いやられる・・・

マリコが歩んだ壮絶な人生は、観ていて心が痛いけれど、

この世にマリコと同じ境遇の人はどれだけたくさんいるのでしょう。

虐待は、決して目をそらしてはいけない問題だと思います。

 

どんどん壊れていくマリコをシイちゃんは、どうすることもできなかった。

 

2、虐待オヤジの背中

左:マリコ奈緒) 右:シイノ(永野芽郁
 

俳優陣の演技は素晴らしかったです。

主演の奈緒永野芽郁の演技については

ここに書くまでもありませんので割愛いたします。

私が、個人的に心に残っているのは

マリコの父親の背中です。

父親が出て来るのは、1時間25分の本作の中で

わずか数分。

あとは怒鳴り声くらい。

ほとんど顔も映ってないんですが、その後ろ姿がよかった。

マリコの遺影と骨壺を前に、すわりこむ父親の背中。

どうしようもない鬼のような実父でしたが、その後ろ姿から

いつも心のどこかで、本当は娘を愛したいと思っていた、

「なんで俺はこんなことしちゃうんだろう」と思っていたのかもしれないなぁと

思いました。

ほんの数秒映っただけの背中で、それだけのことを表現できる

父親役の尾美トシノリの演技は素晴らしい。

そして、完全な悪である父親にその一面を見せることで

この作品に厚みが出ている気がしました。

 

でも、もちろん、今さらすぎますよね。

後悔するなら、もっと早くすればいいのに。

娘が死んでから、悲しんだって遅すぎますし、

どうしようもない最低最悪の父親であることに変わりはありません。

「てめえに弔われるなんて白々しくて反吐が出んだよ!」

と怒鳴って包丁を突きつけたシイノに共感の嵐。。

 

虐待からマリコを救えなかったシイノは、せめて遺骨だけは救い出そうとする。かっこいい!

 

3、名言!!「もういない人に会うには、自分が生きているしかないんじゃないでしょうか」

 

大切な人を喪うという経験は誰もが人生の中で

何度かは乗り越えなくてはならないもの。

喪失感に打ちのめされたり、後悔で押しつぶされそうになることも

あるかもしれません。

自分が死んだほうがいいのではないかと思うことも。

まさにそんな状態のシイノに、青年マキオはこんな言葉をかけます。

 

「もういない人に会うには、自分が生きているしかないんじゃないでしょうか。

あなたの想い出の中の大切な人と、あなた自身を大切にしてください」。

 

シイノが旅をする中でピンチになったとき、

どこからか、ふいに現れて助けてくれる青年マキオ。

彼が、最後に駅のホームでシイノに言う言葉です。

もう前と同じようには会えなくても、いつも記憶の中に

亡き人は生き続ける・・・

だから、「死んで会おう」じゃなくて、

生き続けながら、いつもその人と「共に生きる」。

マキオはそう言いたかったんだなと思います。

 

 

この映画では「友情」、「虐待」、そして「生と、死との向き合い方」が

描かれていると思います。

シイノもマキオも、それぞれ人生に葛藤や生きづらさ、苦しみを抱えていて

一度は死を選ぼうとします。

でも、結局は生き続けることを選ぶのです。

「わたし、おばあちゃんになってもシイちゃんといっしょがいいな。

それでさ、ネコ飼おうよ。一緒に暮らしてさ」

 

そんな夢を何度も語っていたマリコが自ら命を絶ったのは

とても辛いことです。

でも、それでもシイノは、ともかく「生」を選びました。

心の中のマリコと生きるために。

 

4、賛否両論??ラストをあなたはどう思う?(ネタバレあり)

ラストについては、いろいろな意見があったようです。

マリコが遺した遺書に何が書かれていたのか。

知りたい!!という声も多かったようです。

でも、私はこのラストが好きです。

シイノがマリコの遺書を開けて読み、

満面の笑顔になり、それから泣いたところがよかった。

号泣ではなく、まずは、笑顔。

きっと二人にしかわからない内容だったんだろうな。

いろんな想い出や、楽しかった時間。

二人が過ごした、もう二度と戻らないかけがえのない時。

マリコからの最後の手紙には、それらが詰まっていたのでしょう。

だから、シイノは、あんなに笑顔だったんだなと思います。

そうしてやっぱり、こんなにも大切な大好きな存在を失ってしまったことに

泣いてしまう。

死を選ばざるをえなかったマリコが最後に残した手紙が

シイノを笑顔にさせるようなものであることに、

マリコの優しさと、この映画の「救い」があるのだと思いました。

私はあの、光が差し込むようなラストが好きです。

 

4、最後に

「マイ・ブロークン・マリコ」は、とても重いテーマを扱っているものの

ところどころで、くすっと笑ってしまうような面白いシーンもあり

重たすぎないところがいいです。

マリコとシイちゃんの友情、そして生と死。

シイノは、これからもきっと、ずっと胸にマリコの想い出を抱き続けて

歩んでいくのでしょう。

心に刺さる映画でした。おすすめです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

 

 

 

こちらは、「マイ・ブロークン・マリコ」の脚本・監督のタナダユキさんの代表作。

まだ観てないけど気になるんですよねー。↓↓

 

<過去記事紹介>

 

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