Miyukeyの気まぐれブログ

愛媛県在住のアラフォー主婦です。本、洋画、訪れた場所などの感想を気まぐれに、かつ自由に綴りたいと思います☆笑顔の扉の”key"を見つけられる毎日になることを祈って♪現在は、仕事繁忙期のため月に2回の更新となっていますが、よろしくお願いいたします☆

アーティゾン美術館 「印象派 画家たちの友情物語」展  画家たちの運命と情熱と。

初めて訪れたアーティゾン美術館(旧:ブリジストン美術館)。

今回は「M式『海の幸』森村泰昌」展、

印象派 画家たちの友情物語」展、

「挿絵本にみる20世紀フランスとワイン」展

という三部構成の展覧会を開催中です。(2022年1月10日まで)

アーティゾン美術館ならではの切り口で紹介されている絵画の数々。

その中でも最も心に響いた絵画をピックアップして

お伝えしたいと思います。

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美術館で配布しているチラシがわかりやすかった

 

1、勝利の女神(アーティゾン美術館について)

2020年に「ブリジストン美術館」から名称が変更になった

アーティゾン美術館。

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外観だけでも絵になりそう。

青い空を映してそびえるビル、

秋色の木々が晩秋を感じさせました。

 

 

各階に像があり、私が一番心に残ったのが

勝利の女神」(クリスチャン・ダニエル・ラウホ)。

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どの角度から見ても美しい。

新種株のコロナウィルスに人類が打ち勝てるよう

勝利の女神に願掛けしたい気分・・・

 

 

2、ルノワールとカイユボット~最期に託した想い

 

実は、この展覧会で一番胸に響いたのが、こちらの作品。

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 「イエールの平原」 1878年 ギュスターヴ・カイユボット

 

この絵の前に立ってみると、

緑の木々の美しさに胸打たれるとともに

この景色を見ている一人の青年、カイユボットの顔までもが

見える気がするのです。

どこか憂いを讃えた、寂しそうな瞳の青年。

この平原は、もしかすると

カイユボットの心象風景とも言えるのではないでしょうか。

カイユボット30歳の時の作品。

少年時代を過ごしたイエールの平原は

彼にとって、いつも心の隅で温かく支えてくれる故郷だったのかもしれません。

20代で弟を亡くしたカイユボットは

自身も早くから遺言書を作り、

ルノワールに遺言執行者になってもらうように託しました。

まるで、自分の生涯がそう長くないことを悟っていたかのように。

遺言書の内容は、画家たちの展覧会の準備資金に自身の遺産を寄付すること、

自身の絵画コレクションは国家へ遺贈すること。

作品制作と同様に

芸術家の仲間を支援することにも情熱を燃やしたカイユボット。

自らの死後も仲間たちが経済的な問題を気にせず

制作活動に打ち込めるように取り計らったのです。

カイユボットが45歳でこの世を去った後、

遺言執行者のルノワールは3年をかけて交渉し、

結果、約半数の遺贈が受け入れられたそうです。

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  「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」 1876年 

 ピエール=オーギュスト・ルノワール

 

子どもが生み出す独特の甘い空気感や匂いまでもが

伝わってくるような一枚。

 

 

わたしにとって絵画は、なにか好ましく、喜ばしく、きれいなものだ。

そう、きれいなことが肝要だ。

われわれの人生に醜いものは充分ある。

それにつけ加える必要はない。

引用:ルノワール (日経ポケット・ギャラリー)

 

彼が残したこの言葉どおり、

彼の作品は温かで優しい光に満ちています。

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「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」(部分)

 

 

 

3、マリー・ブラックモンが絵筆を置いた理由は

 

三大印象派女流画家の一人と言われる

マリー・ブラックモンの作品。

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 「セーブルのテラスにて」 1880年 マリー・ブラックモン

 

展覧会場の中で圧倒的な存在感を放つ一枚の作品。

構成、色彩、細やかなタッチ・・・

私は絵画の専門的なことは何もわかりませんが

そんな私でも、この絵の前に立つと

マリー・ブラックモンのほとばしるような絵画の才能に

圧倒されるのです。

が、彼女は後に完全に制作活動から離れ、

画壇から姿を消したというのです。

これほどの作品を残した画家に、いったい何があったのか?

モヤモヤとしたまま、展覧会場を後にしましたが

帰宅してネットで調べて、驚愕の事実を知りました。

 

ルーブル美術館で模写をしていた際に運命的な出会いを果たした

版画家フェリックス・ブラックモンと結婚。

息子にも恵まれましたが、そこには壮絶な夫婦の軋轢がありました。

夫フェリックスは、マリーをミレーやコロー、ドガなどの画家に紹介し

マリーの絵は注目を集めるようになります。

ところが、その一方で、フェリックスはマリーの絵画に批判的で

嫉妬深く、なにかにつけて怒鳴り散らしたそうです。

そんな夫の許しがたい態度にもめげず、

自分の才能を信じて突き進み、サロンでの入選を果たし

どんどん名が知られていったマリー。

でも、家庭での軋轢、夫との溝が次第に

マリーの精神を追い詰めていくのです。

50代になったマリーはついに絵筆を置き

ほとんど家からも出ず、76歳でこの世を去るまで

二度と絵筆を手にすることはなかったそうです。

(参考:http://blog.livedoor.jp/kokinora/archives/1022015541.html

 

当時、女性が画家として生きていくのが難しい時代だったというのも

一因にあったでしょう。

それにしても、惜しい。悔しい。

これほどの才能を持ったマリーが

女性に生まれたということだけで、

多くの苦難を乗り越えねばならず、

結局、その運命に呑み込まれてしまったのです。

それでも、マリー・ブラックモンの絵画は

時を超え、国境も超えて

今も、私たちの心を照らしてくれるのです。

芸術は色褪せることはありません。

マリー・ブラックモンが自分を信じて描き続けた作品は

これからも永遠に、この世に残るのです。

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マリー・ブラックモン  写真:ウィキペディア



 

4、メアリー・カサット 得られなかったものへの想い

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 「娘に読み聞かせるオーガス」 1910年   メアリー・カサット

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「日光浴(浴後)」 1901年 メアリー・カサット

 

「女性らしさ」。

この二枚の絵を前にしてその言葉が思い浮かびました。

女性にしか描けない繊細さとなめらかさ、柔らかさに満ちた絵。

母子を数多く描いたメアリー・カサットの絵には

彼女にしか表現しえない空気感が流れているように思います。

静かで穏やかな、日の光に満ちたような世界観は

観ている者の心まで優しくしてくれる気がします。

 

メアリー・カサットが、生涯、独身で子供も持たなかったと知り

驚きました。

カサットの絵には、娘への愛情や

母になることの喜びに溢れている気がしたから。

結婚によって、画家としての活躍の場を与えられ、また奪われもしたのが

前章で紹介したマリー・ブラックモンなら

メアリー・カサットは、最初から結婚生活と画業の両立の厳しさを

知り尽くした人でした。

カサットは、自身の歩みたい人生をしっかり見据え、

自分の才能の豊かさと社会の風潮を

的確に捉えて行動できる女性だったのではないでしょうか。

父親からは「女が画家なんて」と画業の道を反対され、支援を受けられず、

兄弟の死に打ちのめされて何度も

筆を折りながらも、

結局は画業へと戻ったカサット。

カサットは、自分が選んだ道を最後まで歩み続けたのです。

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 「娘に読み聞かせるオーガス」(部分) 「日光浴(浴後)」 (部分)

 

母と娘の絆をテーマに多くの作品を残したカサット。

女性が結婚生活と画業を両立するのが非常に困難で

どちらかを選択せねばならなかった時代において、

カサットは、持てる才能を存分に発揮して

後世に残る作品を生み出しました。

そのことに彼女も誇りと幸せを感じていたに違いありません。

けれど、この絵画の数々を目にして、ふと思うのです。

幸福と喜びに満ち溢れた母娘のモデルを前にして

自分が生涯得られなかったものについて

想いを巡らせることはなかったのか、と。

カサットもまた、時代の波に翻弄された女流画家の一人だったのです。

 

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メアリーカサットの作品を賞賛し、印象派展への参加を進めたエドガー・ドガの作品(右)

二人の友情は生涯続いたと言います。

「マチルド・サル嬢の肖像」1892年 エドガー・ドガ

 

 

 

 

5、ドンゲンの「シャンゼリゼ大通り」の平和

 

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最後は三つの構成の中のもうひとつのコーナー

「挿絵本にみる20世紀フランスとワイン」から

ご紹介します。

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シャンゼリゼ大通り」 1924~25年 ケース・ヴァン・ドンゲン

 

両大戦間の平和なパリの光景を描いた作品。

この絵の前に立つと、抑圧されたものから解き放たれた人々の

開放感がいきいきと感じられます。

流行の服に身を包み、真っ赤な口紅で着飾る夫人たち、

外で縄跳びをして遊ぶ子供たちのはしゃいだ声、

犬の鳴き声や、観光に出かける車の間伸びしたクラクション。

遠くには凱旋門が見え、緑がきらめいて見えます。

平和であるということ、豊かであるということ、

いまこの瞬間に与えられた自由をめいっぱい楽しもうとする人々の

享楽的な喜びが満ち溢れているのです。

シンプルな線で描かれた絵は、どこか可愛らしくもありますが

それだけではなく、人々の自由の歓びの感情や空気感を捉えているところが

ドンゲンの素晴らしさだと思います。

 

 

5、最後に

 

今回、初めて足を運んだアーティゾン美術館。

とても充実したコレクションを観ることができました。

時代の流れ、社会の風潮、

時に運命に翻弄されながらも、描き続けた画家たち。

芸術への情熱を燃やし

互いに影響を与え合いながら傑作を生んだ画家たちの

熱い息遣いが聞こえるような美術展でした。

また、ほとんど全ての作品が写真撮影可能というのも

嬉しいです。

名画の数々に再会するべく、また再訪したい美術館のひとつとなりました。

 

最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

 

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あなたが心を奪われるのは、どの作品でしょう??

芸術との出会いを、ぜひ楽しんでください^^

 

左上から  「黒扇」藤島武二  「化粧」モロー(部分) 「バルコニーの女と子ども」モリゾ

「わたつみのいろこの宮」青木繁 「猫のいる静物藤田嗣治  「ポワレの服を着たモデルた

ち、1923年の競技場」デュフィ  「上手に行われた記念日」藤田嗣治

 

 

 

 

今週のお題「最近あったちょっといいこと」

初めて行ったアーティゾン美術館で素敵な作品にたくさん出会えたこと!^^

 

 

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