Miyukeyの気まぐれブログ

愛媛県在住のアラフォー主婦です。本、洋画、訪れた場所などの感想を気まぐれに、かつ自由に綴りたいと思います☆笑顔の扉の”key"を見つけられる毎日になることを祈って♪現在は、仕事繁忙期のため月に2回の更新となっていますが、よろしくお願いいたします☆

千住博美術館(軽井沢) 芸術とは、孤高な闘い

日本国内のみならず、世界中から注目を受ける画家、

千住博の美術館が軽井沢にあります。

いま、日本画で最も高い値がつけられている画家の一人だと聞き、

期待を胸に訪れました。

今回は、私が特に感動した三作品を取り上げてご紹介します。

 

軽井沢の千住博美術館を訪れたのは2021年9月28日のこと。

記事の情報は全てその当時のものです。

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1、美術館の建築スタイル

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館内は撮影禁止なのが悔しいくらい、

素晴らしい空間です。

絵画ももちろんですが、この建築がとても評価されているのです。

真っ白なキャンバスのような壁に

柔らかな陽光が差し込み、

円柱のガラスの中には木々の緑が見える・・・

広々とした展示室は元々の地形を生かし、緩やかなスロープになっています。

暗くて静かな美術館のイメージを覆す、

斬新な建築デザインに、はっとしました。

「森の中を歩いていたら、たまたま絵があるようにしたい」

「草花を見るような気持ちで絵を見てほしい」

と言う千住博の想いを受け

建築家 西沢立衛によって設計されました。

明るく、自然を感じるのびのびとした空間で

肩の力を抜いて、どっぷりと絵画の世界に浸れるひととき。

千住博のアートに対する想いが宿る美術館でした。

 

2、悲しみと孤高と・・・「光」

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「光」(2014年)

 

ひっそりとした森の中に、たった一頭、鹿が佇んでいる「光」。

四季4部作の中の夏を描いた作品です。

自然の雄大さ、森の広さ、そして何より、痛いくらいの静けさが

胸にじんと迫ってくるようです。

木々の黒い影が映る水たまり、靄のかかった森の匂い。

鹿のシルエットが、たまらなく美しく、寂しげなのです。

この絵の前に立って感じるのは、孤独。静寂。

そして、「孤高」の美しさ。

 

千住博という画家は、凍えるような悲しみを知っている人なのだな

と思いました。

そうでなければ、こんな絵は描けないと思うのです。

 

美術館には、千住博の大きな顔写真パネルが掛かっていました。

どちらかというとマッチョで明るい笑顔をした

その写真から受ける印象とは、かなり違う作品の中の静寂に

胸を掴まれました。

 

3、若き日の眼差し「朝に向かって」

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「朝に向かって」(1989年)

 

美術館には千住博がまだ若い頃に描いた貴重な絵も

展示されています。

東京藝術大学大学院を首席で修了、博士課程へと進み、

画家として生きていくことを決意した千住博

テーマとして選んだのは風景画。

しかし、何を描けばいいのか明確にはわからず

焦りと苦悩の中で描き続けた十年間。

筆一本では食べて行けず、予備校の講師のアルバイトで

食いつないだことも。

そんな時期に描かれた一枚が、この「朝に向かって」。

この鳥は、千住博自身なのかな?と思いました。

志を高く、一直線に夢に向かって飛ぶ姿。

周りの空気は冷たいけれど、朝靄で視界もはっきりしないけれど、

それでも空は明るくて、

希望とエネルギーがキャンバスいっぱいに満ちている・・・

若き日の、画家の魂に触れられるような一作です。

 

 

4、観る者の心を映す絵本「星のふる夜に」

 

絵巻物を現代的なかたちで再現するために

一連のストーリーになった作品を描きたいと

筆を取った連作「星のふる夜に」。

これは絵本として出版され

けんぶち絵本の里絵本大賞を受賞しています。

星のふる夜に When Stardust Falls…

 

千住博はオーストラリアのピナクルスという砂漠地帯を訪れ

その壮大な星空に圧倒され、それ以来、星空をテーマに描き始めます。

この絵本もまた、その作品群のひとつ。

15枚からなる原画は、童話を書きたくなるような素晴らしい絵ばかり。

しかし、この作品には文章は必要ないのだと思います。

文字がないから、いい。

きっと観る人によって思い浮かべるストーリーは違っていて

そのときの心の状態によっても変わる・・・

まるで、鑑賞者の心の鏡のような絵本なのだと思います。

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千住博の作品に使われるブルーは、

果てしなく深くて見入ってしまいます。

自然、生命、悲しみ・・・

たくさんのものを描き出す”青”という色の

澄み渡った美しさが印象的です。

 

 

文は一切ない絵だけの絵本。三頭で仲良く寄り添っていたシカのうちの一頭が

ある夜、冒険に出かけるというストーリー。星空を見上げながら川を渡り、ネオンが輝く街に出て、朝日が昇る頃に終わる冒険。なぜシカは冒険に出たのでしょう?あるいは、全く意図せず、星影を追ううちに迷ってしまっただけなのか?美しい絵を見ながら、あなただけのストーリーを紡いでみてください。

 

 

5、最後に  孤高の存在であるということ

 

静寂。孤独。孤高。美。

千住博美術館の作品群を観て思い浮かんだ言葉です。

都会育ちの千住博が壮大な自然に出会った感動から

生まれた風景画の数々。

どの絵も、冷たい空気が満ち、

突き抜けるような静けさとともに孤独を感じます。

けれど、それは「寂しさ」ではない。

生きとし生けるもの全てが向き合っている「孤独」。

千住博の絵の前に立つと

生きることとは、こんなに美しいことなのかと

不思議な感情が湧いてくる気がしました。

芸術作品を生み出すということは、孤独であり

そして孤高な魂が宿っていなければならない・・・

千住博の作品を観て感じたことです。

 

ここでは紹介しませんでしたが、

千住博美術館の大きな見どころのひとつに

「ザ・フォール・ルーム」があります。

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千住博の滝の世界を巨大スクリーンで体感できる「ザ・フォール・ルーム」。

 

世界が豊かになるヒントの一つに「多様性」を挙げている

千住博の描く滝は、

いまの私たちに強く訴えかけるものがあると感じました。

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

<軽井沢についての過去記事>

 

 

miyukey.hatenablog.com

 

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