「盆栽」と聞いて、何をイメージしますか?
日本文化のひとつ。 奥深い! 渋い。
ちょっと地味・・・?
おじいちゃんがたしなむもの・・・??
私のイメージはそんなもので、正直、興味はありませんでした。
最近、さいたま市の街を歩いていて、ふと目に入ったポスター
「ようこそ盆栽の街へ」
という大きな文字を見て、はっとしました。
縁あって、2018年からさいたま市民となった私。
「盆栽の街」の市民なのだから
せっかくなら一度くらいは、盆栽をじっくりと鑑賞してみよう!と思い、
「盆栽美術館(さいたま市)」を訪ねることに!
今回は、とっても楽しく充実した「盆栽美術館」の魅力をご紹介したいと思います。
盆栽美術館の屋外展示場
☆目次☆
- 1、盆栽の街、さいたま市 大宮
- 2、アクセスと外観・ロビー
- 3、屋内展示室
- 4、大木を感じよう
- 5、自然の厳しさを伝える「吹き流し」
- 6、盆栽美術館最大!樹齢500年の五葉松
- 7、森林を表現・・・「寄せ植え」
- 8、「生」と「死」を感じさせる「ジン・シャリ」
- 9、盆栽で季節を楽しむ
- 10、感想
1、盆栽の街、さいたま市 大宮
さいたま市が「盆栽の街」と呼ばれる理由は
さいたま市北区に「大宮盆栽村」があることに起因します。
1923年の関東大震災をきっかけに
東京の団子坂に住んでいた植木職人たちが
より盆栽育成に適した土地を求めて
さいたまに移り住み、「大宮盆栽村」が生まれたそうです。
彼らは江戸の大名屋敷の庭園造りを担った高い技術を持った職人たち。
いまでも、この一帯は盆栽の名品が見られる街として
「盆栽の聖地」と呼ばれているのです。
2、アクセスと外観・ロビー
早速、「盆栽美術館」へ向かいます。
宇都宮線「土呂」下車、徒歩5分。
2010年に開館した「盆栽美術館」。
思ったよりも新しい美術館。
どんな盆栽との出会いがあるのかな?とわくわく!
ロビーで出迎えてくれたのはアメリカヅタの盆栽でした。
断崖に自生する木の姿を見立てた作品だそうです。
3、屋内展示室
展示室には、盆栽についてのパネルがずらりと並びます。
子どもでも理解できるわかりやすい文章で簡潔に
基本的な知識がまとめてあります。
この解説は、超・初心者の私には有難かった!
なにしろ、盆栽をじっくり鑑賞するのは初めて。
知識はゼロなのですから。
大まかな歴史や鑑賞方法を知ったところで、
早速、盆栽を見ていきます。
残念ながら、館内は撮影禁止。
素晴らしい盆栽の数々は、胸に刻み込んで
屋外へ。
4、大木を感じよう
(もみじ 獅子頭 推定樹齢120年 白交楕円鉢)
どっしりと根を張り、白くしなやかに伸びた枝が美しいもみじです。
盆栽は、鉢に植えられた一本の木を、大木として見ることが重要なのだそうです。
正面からだけでなく後ろ、横の姿、そしてしゃがんで見上げた姿を
鑑賞することによって、そこに凝縮された大自然を感じることができるのだとか。
一枚目の写真は、しゃがんで写してみました。
自分が小人になった気分。
本当に大木に見える!
5、自然の厳しさを伝える「吹き流し」
葛飾北斎の名前を冠した作品は、
ひときわダイナミックで心に残りました。
北斎が描いた大波の迫力に通じるものがあり、
白い幹(シャリ)がしぶきのようにも見えます。
「吹き流し」は、私が一番、惹かれた盆栽の形態です。
一本の木が、自然の厳しさに耐える姿を表現した「吹き流し」は、
風雨や嵐の中で、懸命に生き続けようとする樹木の
生命力、強さを感じさせてくれるからです。
強さは、美しさ。
樹木の雄々しさに、
試練に打ち勝とうとする人間の姿が
見える気がするのは私だけでしょうか。
6、盆栽美術館最大!樹齢500年の五葉松
ひときわ大きく光を放つような盆栽。
「千代の松」。なんと樹齢500年!!
その圧倒的な迫力と風格、枝の美しさ・・・
迫ってくるオーラのようなものを感じました。
高さ1.6メートル、横幅1.8メートル。
この美術館の中でも最大級の盆栽なのだそうです。
7、森林を表現・・・「寄せ植え」
これも私が好きだった盆栽のひとつです。
見た瞬間、宮城県・松島の遊覧船から見た
かわいいポコン!とした小さな島々を思い出しました。
あの美しい寺で感じた感動を
盆栽で表現したなら、こんな作品になるかもしれません。
盆栽の「寄せ植え」とは、森林の趣を表現しようとするものだそうです。
確かに、しゃがんで盆栽と同じ目線で見てみると
森の中にいるような気持ちになります。
こんな小さな鉢の中で、大きな森林を感じられる、
そのことがとても不思議に感じました。
8、「生」と「死」を感じさせる「ジン・シャリ」
一部が枯れ、白くなった枝を「ジン(神)」、
幹を「シャリ(舎利)」というそうです。
これらは長い歳月をかけ、木が生き抜いてきた証拠。
盆栽では、いま生きている緑の葉と
枯れてしまった白の「ジン・シャリ」のコントラストを楽しむのだといいます。
「生」と「死」。
二つがひとつの鉢の中に納まっている様は、
あすもあさっても続くと思ってしまいがちな「生」と
実は隣り合わせである「死」というものについて語りかけてくるようです。
「ジン・シャリ」がある作品の中でも、
私が面白く感じたのは、こちら。
五葉松「うず潮」。推定樹齢は、500年。
過ぎ去った長い年月を語るかのように
枯れて白くなった部分がうず潮のカタチに丸くうねっています。
9、盆栽で季節を楽しむ
花や実をつける木、葉の色が変わる木の盆栽は
季節を味わうことができます。
秋や春に、またこの美術館を訪れ
いつもとは一味違ったお花見、紅葉狩りをするのもいいですね!
今の時期は、いくつかの盆栽がかわいい実をつけていました。
10、感想
面白くて、奇異で、不思議で美しい・・・
昔から持つ「盆栽のイメージ」の色眼鏡を全て取っ払い、
まっさらな気持ちで向き合っていると、
そんな盆栽の魅力に引き付けられていきます。
たかだか腕で抱えられるほどの鉢に納まる世界で、
自然の雄大さ、生命力、生と死・・・
多くのことを表現し、私たちに語りかけてくる盆栽。
この文化は、日本が誇れるものであると改めて感じました。
盆栽の世界は奥深いものだと知っていたし、
ほんの少し何かを読んだり聞いたりして理解できるものではないと
思っていたので、敷居が高く感じていましたが
そこまで深く考えず、まずは実物を観て、
その世界を感じることが大切なのだと思います。
知識は後からでもついてくる!
だから、こうして、たくさんの盆栽の名品を
じっくりと鑑賞できる場を与えられたことは素晴らしい機会でした。
盆栽の世話とは、「自然との対話」なのだそうです。
作品としてのイメージをしながら、慎重に形を整え
樹木の状態を適切に見極めながら手入れしていく・・・
そんなきめ細かい作業を経て、ようやく盆栽が完成していくのだと知りました。
「盆栽」は、私たちと同じように生きています。
これからも枝を伸ばし、一部は枯れ、一部は新芽を出し
種類によっては花や実をつけ、葉の色を変える・・・
もしかしたら、いま、この場にいる人間より長生きするかもしれない。
「今、生きているもの」を、成長も含めて観察し、
語り合い、慈しみながら、ひとつの作品として仕上げていくということの
難しさと奥深さを感じました。
今回の記事でもご紹介しました「千代の松」や「うず潮」は
推定樹齢500年。
地面に植わっている木が樹齢500年と言われてもすごいと思うけれど
盆栽で500年・・・ということは、常に誰かが世話や剪定をし続け
大切に育ててきたということなのでしょうか・・・?
時代を超えて、託されてきた気持ちや想いも
ひとつの作品の中に込められている・・・
盆栽が放つオーラとは、
木の生命力 + 人のかけた手間 + 愛情 なのかもしれません。
盆栽の世界をちらりと覗いて奥深さに驚いた私。
次回は、盆栽の知識をしっかり得てから行ってみたいです。
11、最後に
盆栽大好きな方も、超初心者も、
どんな人でも盆栽の奥深さに出会える「盆栽美術館」。
私が訪れたのは土曜日の午後でしたが
子ども連れのお母さん、外国人のご夫婦、
ファッショナブルな服に身を包んだ若い女性、
アラサー夫婦(←これは、私たちです)など
幅広い年齢層の方々が盆栽を楽しんでいました。
ただ、夏は、暑い!!
当然のことながら、屋外展示場は、猛暑です。
全ての盆栽をじっくりと時間をかけて見ることはできず、
とても無念でした。
夏場は、くれぐれも日射病・熱中症に気を付けながら、
盆栽を楽しんでくださいね。
ミュージアムショップでは、たくさんの盆栽についての資料や
ご当地サイダーが売っている他、
美術館の周辺には盆栽カフェという気になるお店も見つけました。
次回はゆっくりと、そのあたりも楽しんでみたいと思います。
<さいたま市についての過去記事>
「寿司」も「盆栽」も日本が誇る日本文化のひとつです!
今週のお題「寿司」