Miyukeyの気まぐれブログ

愛媛県在住のアラフォー主婦です。本、洋画、訪れた場所などの感想を気まぐれに、かつ自由に綴りたいと思います☆笑顔の扉の”key"を見つけられる毎日になることを祈って♪現在は、仕事繁忙期のため月に2回の更新となっていますが、よろしくお願いいたします☆

銀色夏生の写真詩集「微笑みながら消えていく」 美しくも切ない景色が心に染みわたる一冊

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いまはまだツボミだけれど、数週間後には今年もこんな風に満開の花をつけてくれるだろうなあと、いまから春が待ち遠しいです☆

実家の庭にて☆街道桜 2019.3.31撮影 Photo by Miyukey

 

日ごとに春めいてきました。

今、私は大阪の実家にいます。

二か月ぶりの大阪。

やはり生まれ育った場所に帰るとホッとします。

何より、家族の笑顔が嬉しい♪^^

 

東京から新大阪間の新幹線は、コロナ禍の一時期に比べると、

乗客は増えたかなと感じました。

新大阪に降りてみると、

私と同じようにトランクを持った人が目につきました。

年末に帰省した時は、トランクを持っている人自体が少なくて

ガラガラガラ!というトランクを引く音が駅に響きわたると

なんとなく悪いことをしているような肩身の狭い気持ちになったものでしたが・・・

まだまだ油断できないコロナ禍、

皆様もお気をつけてお過ごしください☆

 

実家の本棚には懐かしい本がいっぱい。

十年以上も昔によく読んでいた本、

買ってみたけれど今は興味をなくしてまだ読まないまま置いてある本。

そんな中に、雑誌「ダ・ヴィンチ」もありました。

大学生の頃、私がよく本の感想や本にまつわる話を投稿していた雑誌です。

このブログでも、二回、「ダ・ヴィンチ」に掲載された文章を紹介しましたが

今回は21歳の頃に書いた文章をご紹介したいと思います。

雑誌「ダ・ヴィンチ」の「贈った理由 贈られた気持ち」という

本のプレゼントについてのエピソードを投稿するコーナーに

もう10年以上も前に、掲載されたものです。

 

↓↓過去に「ダ・ヴィンチ」で掲載された文章を紹介した記事は、こちらです↓↓

miyukey.hatenablog.com

 

 

miyukey.hatenablog.com

 

微笑みながら消えていく

 

入院していた頃、母が一冊の本を買ってきた。

切ないほどに透き通った空の表紙。

青でもなく灰色でもない、その微妙な色合いの写真を眺めると、

どこかで見上げたことがあるような懐かしさが、

風のように胸をかすめた。

題名は「微笑みながら消えていく」。

殺風景な病室で、淋しい入院生活を送っていた私は、

ページをめくって息をのんだ。

それは、ただの写真集ではなかった。

新しい一日が始まるあの美しい朝の光、雨の匂い、

雪が積もった時の静寂、風に揺れる木々のざわめきや、雲の流れ・・・。

すべてがその場所で生き生きと揺れ動き、音をたて、

生命が匂い立つようだ。

当時小学生だった私は、写真の隅に小さな文字で書かれた

恋の詩の意味はわからなかった。

それでも毎日毎日、ページをめくった。

そして味わった。流れゆく雲のスピード。風の感触。

大地に染み込む雨粒の音を。

この本の中でだけ、私は自由に自然の中を走り回った。

あれから十年。私は大学生になった。

外国を旅し、美しい自然もこの身体で感じた。

恋をし、あの頃わからなかった感情も経験した。

病室に閉じこもり、外気を吸うことすら許されなかった私に

自然の息吹を感じさせてやろうという母の思いやりも、

今になってやっと理解し、素直に感謝できる。

今も、あの時私を支えてくれた本は

大切に本棚に収められている。

ところどころページは外れ、しわになり、

染みもあるけれど、辛かったあの頃眺めた空や鳥、

感じた風や雨粒は今も変わらず静かに微笑みながら、

ページの向こうから私を見守っている。

 

 

 

 

微笑みながら消えていく

微笑みながら消えていく

 

 

なんだかとても重病だったような書き方ですが

この時は、検査入院で、ほんの数週間の入院でした。

にもかかわらず、甘えん坊の小学生だった私にとっては

母と離れていることが苦痛で寂しくてたまらなかったことを

覚えています。

私が入院していた病室からは、宝石箱をひっくり返したような

美しい夜景が見え、

面会時間が過ぎて母が帰ってしまった静かな病室で

一人、泣きながらその夜景を眺めていると

涙で光がゆがんで美しいながらもとても切ない景色だったことが

思い出されます。

母は、毎日、私が喜ぶようなものを持って来てくれました。

この詩集もそのひとつ。

病院へ来る前に本屋で見つけ、

「微笑みながら消えていく」という題名が、

入院している娘へのプレゼントとしては、

なんとも不吉で、何度も買うのをやめようとしたけれど

あまりにも美しい本で、絶対これは気に入るにちがいないと思ったから

買ったのだと言っていました。

 

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大学時代、銀色夏生さんの写真に憧れて、一眼レフカメラを買い、写真を撮ることにハマっていました。この写真も、その頃に撮ったものです。

いまは、手軽なスマホに頼ってばかりですが・・・

Photo by Miyukey

 

 

その後も銀色夏生さんの写真詩集は、自分でも何冊も買いました。

今でも本棚に大切に並べてありますが

振り返ってみると、辛い時や寂しいときによく広げて読んでいた気がします。

自分で自分の殻が破れなくてもどかしいとき。

体調が悪くて本が読めないけれど、何かしていないと不安でたまらなかったとき。

自分のしたいことがわからなくて道に迷ったような気分になったとき。

そっと広げると、銀色夏生さんの

美しくも切ない写真と詩が心に染みわたりました。

これからもきっと、辛い時があれば

銀色夏生さんの写真詩集を手に取るのだろうと思います。

私の心の休憩所のような、宝物のような本です。

 

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

 

 

 

君のそばで会おう (角川文庫)

君のそばで会おう (角川文庫)

  • 作者:銀色 夏生
  • 発売日: 1988/09/22
  • メディア: 文庫
 

 

 

外国風景 (角川文庫)

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