Miyukeyの気まぐれブログ

愛媛県在住のアラフォー主婦です。本、洋画、訪れた場所などの感想を気まぐれに、かつ自由に綴りたいと思います☆笑顔の扉の”key"を見つけられる毎日になることを祈って♪現在は、仕事繁忙期のため月に2回の更新となっていますが、よろしくお願いいたします☆

函館が舞台②美しくわがままなお嬢さまをガーリッシュに描く「夏子の冒険」

 

夏子の冒険 (角川文庫)

夏子の冒険 (角川文庫)

 


三島由紀夫の「夏子の冒険」。

三島由紀夫といえば、純文学!というイメージだが

本作は、エンターテイメント要素の強い小説だ。

最初から最後までグイグイ引き込まれるストーリーと、

ユーモラスな登場人物、美しい函館の街の描写・・・

三島由紀夫のガーリッシュな長編小説「夏子の冒険」を紹介する。

 

美しくわがままな20歳の夏子は、

周りの男たちの平凡さに辟易して、

トラピスチヌ修道院へ入る決意をする。

ところが函館に行くまでの船内で毅に出会い

彼の元恋人の敵討ち(クマ狩り)について行くことに。

夏子の美しさ、わがままなお嬢さまっぷり、

毅の精悍さ、夏子を案じて追い掛け回す祖母、伯母、母の三人マダムたち、

毅の友人,小太りで無邪気な野田など

登場人物もユニークだ。

 

小説の舞台は北海道の函館

特に、夏子が毅といっしょに登る函館山での描写は素晴らしい。

アイヌの村や函館、湯の川・・・函館の近隣の街もいきいきと描かれている

(函館を舞台にした作品は、こちらもチェック→

函館が舞台!猫好きにおすすめの映画「世界から猫が消えたなら」 - Miyukeyの気まぐれブログ

 

 

「夏子の冒険」を読み、

「『若い』って、こういうことだなあ」と思った。

私も、20歳のころは、まさに夏子と同じような考え方だったからだ。

良いとか悪いとかではなく、平凡な幸せを追い求める男たちの

ある種の「あたたかさ」に、ふっと冷めてしまうというか、

飽きてしまうのだ。

結婚し、あたたかなマイホームに子供がいて、

会社で重役になる自分を、手料理を作って待っていてくれる奥さんが

笑顔で迎える・・・

そういう色が男の目にうつったとたん、

たまらなく退屈に思えてしまう、

その男自体が、つまらない存在に思えてしまう。

そういうことが、確かに私にもあった。

 

夏子がこの後、オバサンになって、私のように

「平凡のありがたさ」とか「平たんな道が幸せ」だと思うようになるのか、

それは、わからない。

でもとにかく、夏子のわがままや無鉄砲さ、

刺激と情熱と夢に燃える男に惹かれてしまうのは

「若さ」の象徴のように思えてならない。

 

夏子にかつての自分を重ね合わせ、

「ああ、私も年をとったなー」と、しみじみ思った。

平穏な人生、平凡な幸せの心地よさにドップリつかったオバサンの自分に

ふと気が付いた。

 

もしこの小説に、私が20歳で出会っていたなら、

激しく夏子に共感したにちがいない。

30代で、主婦になった今、夏子の姿の中に

輝いていた自分の若き日々を見た。

無鉄砲で、いつも刺激を求めていた頃を。

けれど、あの頃はまったく知らなかった幸せを

今は知っている。

人は変わっていく。

次に、この小説を手に取る時、私はどんな自分になっていて、

どんなことを思うのだろうか。

 

三島由紀夫が26歳で書いた「夏子の冒険」。

のちに多くの文学史上に残る大傑作を生みだした文豪の

ユニークでエンターテイメント性の強いガーリッシュな作品だ。

 

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夏子が毅と眺めた函館山からの景色。


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函館山からの夜景はミシュラン三ツ星!美しい夜景に胸が打たれる。山頂は冷え込むので防寒を。


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男たちに愛想をつかした夏子が入ろうとしたトラピスチヌ修道院。(結局、入らなかったけど)


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トラピスチヌ修道院は最も戒律が厳しいといわれる。修道女たちは、外界の接触を断ち、終生、沈黙と労働と祈りの毎日を送る。

 

夏子の冒険 (1960年) (角川文庫)

夏子の冒険 (1960年) (角川文庫)

 

 

 

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